木娘(きむすめ)のこと
これは父から聞いた話を思い出したので書いておこうと思った。
家ではあまり話しをしなかった無口な人だったが、まれに昔の奇妙な風俗習慣を垣間見ることのできる興味深い話しもした。今はそーゆう話しがあまり聞けないのだ。もっといろいろ話しをしておけばよかった・・
なんて思った今日この頃、こんなエピソードを思い出した。長い話しですヨ
たまたま2人で夕食をしていた時のことだ。
NHK・夜7時のニュースの最後の話題で、いわゆる「火星のスフィンクス」についてNASAが公式に人工物ではなく、自然の物体だと発表した時だった。
すいません いきなり突拍子も無い話題ですね・・・説明しよう。
昔から火星には植物が生育しているような模様が見えたり、火星人が存在するという想像がしっかりとあった。私の持ってる子供用天文の図鑑にもちゃんと載ってたりして。
時代は進んで大学生の頃、家庭教師で教えていた中学生の読んでいたG社の雑誌で火星のスフィンクを知った。
火星にはさらにピラミッドもあるというから、想像が進化してるなぁと思った。
さて、NASAによると「人間は自然界に何か似たかたちを探しだそうとする習性があるようだ」とのコメントでニュースは閉めくくられた。
その時父がこう言った。「昔、(戦前〜戦後頃まで)『木娘』という遊びというか噂があって・・」
キムスメ(生娘)って時代劇でいうところのヴァージンであるから、親子の会話で突然キムスメなんていわれると面食らう。それを察したか、すかさず父は続けて語った。
とある神社やお寺の樹木がまるで女性の姿のように見えるそうで、木の娘=キムスメなのだ。
それも昼間ではなく夜。暗闇の中をまるで日本髪を結った女性そっくりに見えるという。
社寺に植えてある樹木ならクスノキなどの常緑広葉樹であろう。
クスノキはムクムクしてるから、それが丸みをおびたシルエットとして浮かぶ姿はなんとなく想像できるような・・いや、できないような。
それもどうやら「等身大の女性」ではなく「巨人」だそうだ!
ともかく自然界に何かを見出そうとする習性に基づく遊びだ。隠し絵というか見立てというか・・
季節は夏だ。納涼・ミステリーっぽい話題が最高だが、ただ「お話し」で終わるだけでは面白くない。実際にこの目のでみてやろう!というのに、木娘探しという遊びがあったのだろう。
けっこう大勢の人が集まったりしては「居た!」「見えない・・」とかやってたそうだ。
その出現ポイントは新聞記事に載ったりもしたそうで、京都のあちこちにあったそうだ。
テレビもカラー写真もなく、現代とは比べ物にならないほど夜も暗い時代、みんなの目玉→脳の認識力は現代人とは違って、かなり鋭敏だったはずだ。
そんな人達が集まって現代で例えればモギ先生の提示する画像みたいなことをライブでやってたんだろう。
僕もキムスメを探す時がある。でもそんな状況自体がマレなのだ。本当にまれに、灯りの無い夜に暗い樹木を見る機会があれば眼を凝らすのだが、全くもってつかめない。
木娘に会える時は来るのかな?
(写真と本文は無関係です)